IBM CloudへのカスタムイメージインポートとVHDからqcow2への変換方法
概要
IBM Cloud VPC(Virtual Private Cloud)でカスタムイメージをインポートする際には、qcow2形式またはVHD形式のイメージファイルが必要です。2025年現在、IBM Cloudは両方の形式をサポートしていますが、環境や用途によって適切な形式を選択する必要があります。
本記事では、VirtualBoxやHyper-Vで使用されているVHD形式のイメージファイルを、qcow2形式に変換する方法を解説します。
サポートされているイメージ形式
IBM Cloud VPCでは、以下のイメージ形式がサポートされています:
- qcow2形式 – QEMU Copy On Write 2形式(推奨)
- VHD形式 – Virtual Hard Disk形式
注意事項
- イメージをIBM Cloud Object Storage (COS)にアップロードしてからインポートする必要があります
- Windowsイメージの場合はvirtio-winドライバーとCloudbase-initのインストールが必要です
- Linuxイメージの場合はcloud-initのインストールが推奨されます
- VirtualBoxはqcow2形式をネイティブサポートしていないため、変換が必要な場合があります
QEMU-IMGツールについて
qemu-imgは、QEMU(Quick Emulator)プロジェクトの一部として提供されている仮想ディスクイメージ管理ツールです。様々な仮想化プラットフォーム間でイメージを変換できる強力なツールです。
対応フォーマット
qemu-imgは以下のフォーマットに対応しています:
- qcow2(QEMU)
- vhd/vpc(Microsoft Virtual PC / Hyper-V)
- vmdk(VMware)
- vdi(VirtualBox)
- raw(Raw disk image)
- qed(QEMU Enhanced Disk)
Windows環境でのqemu-imgのインストール
方法1:Cloudbase Solutions版(簡単・推奨)
最も簡単な方法は、Cloudbase Solutionsが提供している最適化されたバイナリを使用することです。
- ダウンロード
以下のURLからqemu-imgのWindows版をダウンロードします:
https://cloudbase.it/qemu-img-windows/ - 解凍
ダウンロードしたZIPファイルを任意の場所に解凍します。

方法2:公式QEMU for Windows(フル機能版)
より多くの機能が必要な場合は、QEMU for Windowsのフルバージョンをインストールできます。
- 公式サイトからダウンロード
https://qemu.weilnetz.de/w64/
最新版のインストーラー(例:qemu-w64-setup-YYYYMMDD.exe)をダウンロードします。 - インストール
ダウンロードしたインストーラーを実行し、指示に従ってインストールします。
方法3:軽量版qemu-img(GitHub版)
軽量版を希望する場合は、GitHubリポジトリから入手できます:
https://github.com/fdcastel/qemu-img-windows-x64/releases
VHDからqcow2への変換手順
1. コマンドプロンプトの準備
コマンドプロンプトを開き、qemu-imgがあるフォルダに移動します:
cd C:\Users\minok\OneDrive\ドキュメント\qemu-img-win-x64-2_3_0

2. 変換コマンドの実行
変換するVHDファイルがC:\tempにある場合、以下のコマンドで変換します:
qemu-img convert -f vpc -O qcow2 c:\temp\win10.vhd c:\temp\image.qcow2
重要なパラメータ説明:
-f vpc: 入力形式を指定(VHDの場合は”vpc”を使用)-O qcow2: 出力形式を指定(大文字のO)- 第1引数: 入力ファイルパス
- 第2引数: 出力ファイルパス
注意点
VHD形式を扱う際は、**”vhd”ではなく”vpc”**を形式指定に使用することが重要です。これはqemu-imgの仕様によるものです。

3. 変換結果の確認
変換が完了すると、指定した出力先にqcow2形式のファイルが作成されます:

変換後のファイル情報を確認するには、以下のコマンドを使用します:
qemu-img info c:\temp\image.qcow2
その他の便利なオプション
圧縮オプション
qcow2形式への変換時に圧縮を有効にすることで、ファイルサイズを削減できます:
qemu-img convert -f vpc -O qcow2 -c c:\temp\win10.vhd c:\temp\image.qcow2
プログレス表示
大きなファイルを変換する際は、進捗状況を表示できます:
qemu-img convert -f vpc -O qcow2 -p c:\temp\win10.vhd c:\temp\image.qcow2
Azure向けの固定VHD作成
Azure向けに固定サイズのVHDを作成する場合(1MB境界に自動調整):
qemu-img convert -f qcow2 -O vpc -o subformat=fixed input.qcow2 output.vhd
IBM Cloudへのインポート手順
変換が完了したら、以下の手順でIBM Cloudにインポートします:
- IBM Cloud Object Storage(COS)へのアップロード
- IBM Cloud ConsoleでCOSバケットを作成
- 変換したqcow2ファイルをアップロード
- IAM認証の設定
- VPCからCOSへのアクセス権限を設定
- カスタムイメージのインポート
- VPCコンソールで「カスタムイメージ」→「作成」を選択
- イメージソースとして「Cloud Object Storage」を選択
- アップロードしたファイルを選択してインポート
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法
- 変換エラー「unrecognized format」
- VHD形式の場合は
-f vpcを使用(-f vhdではない)
- VHD形式の場合は
- メモリ不足エラー
-mオプションでキャッシュサイズを制限:
qemu-img convert -m 1G -f vpc -O qcow2 input.vhd output.qcow2 - 破損したイメージ
- 変換前にイメージの整合性をチェック:
qemu-img check input.vhd
代替ツール
qemu-img以外にも、以下のツールでイメージ変換が可能です:
- VBoxManage(VirtualBox付属)
- Convert-VHD(PowerShell/Hyper-V)
- StarWind V2V Converter(GUI版、無料)
- Packer(自動化ツール、IBM Packer Pluginあり)
まとめ
IBM Cloud VPCへのカスタムイメージインポートは、適切なツールと手順を理解していれば簡単に実行できます。qemu-imgは強力で信頼性の高いツールであり、様々な仮想化プラットフォーム間でのイメージ変換に対応しています。
2025年現在、IBM CloudはVHDとqcow2の両形式をサポートしていますが、環境や要件に応じて適切な形式を選択することが重要です。また、イメージのインポート前には、必要なドライバーやcloud-init/Cloudbase-initの設定を確認することをお勧めします。



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