Windows上で仮想COMポートを作成し、仮想マシン間でシリアル通信を行う方法
Windowsで複数の仮想マシンを使用してシリアル通信を行う際に便利なのが、仮想COMポートを作成できる「com0com」というツールです。このツールを使えば、物理的なCOMポートがなくても、仮想的なCOMポートを2つ作成し、それらを仮想マシンに割り当ててシリアル通信を実現することが可能です。ここでは、com0comを使って仮想COMポートを作成し、仮想マシン間でファイル転送を行う手順を説明します。
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| Windows Host |
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| | VirtualBox (MS-DOS) | |
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| | | COM3 (仮想COMポート) |<--+
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| | VMware (FreeDOS) | | |
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| | | COM4 (仮想COMポート) |<--+--+
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仮想COMポート間で通信 |
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com0comを使用して仮想COMポートを設定する手順
com0comは、Windows上で仮想的なCOMポートを作成できるツールです。これにより、仮想マシン同士が実際のハードウェアを介さずにシリアル通信を行うことが可能になります。ここでは、com0comのインストールから、仮想マシンに仮想COMポートを割り当てる手順までを説明します。
仮想マシン同士の通信確認 それぞれの仮想マシンにファイル転送ツールであるLapLinkをインストールします。仮想COMポートを通じて、2つの仮想マシン間でファイルの送受信ができるかを確認します。もし通信が正常に行われていれば、LapLinkを使って簡単にファイルを転送できます
com0comのインストール まず、com0comをWindowsにインストールします。このツールを使うことで、仮想COMポートのペアを作成できます。ペアは、物理的な接続がなくても、仮想的に2つのCOMポートが通信できる状態になります。
仮想COMポートのペアを作成 com0comをインストールしたら、管理者権限でcom0comを起動し、仮想COMポートのペア(例:COM3とCOM4)を作成します。このペアは、仮想マシンにそれぞれ割り当てるためのものです。
仮想マシンへのCOMポート割り当て 次に、VirtualBoxとVMwareの仮想マシンをそれぞれ立ち上げます。VirtualBoxにはMS-DOSをインストールし、VMwareにはFreeDOSをインストールしておきます。作成した仮想COMポートのうち、COM3をVirtualBoxのMS-DOSに、COM4をVMwareのFreeDOSに割り当てます。仮想マシンは、割り当てられた仮想COMポートを物理的なCOMポートと認識し、通常通りに通信を行おうとします。実際には、Windows上で作成された仮想COMポートを介して通信することになります。
LinuxやWindowsでも実現できる仮想COMポート通信の応用例
com0comを使用してWindows上で仮想COMポートを作成し、仮想マシン間でシリアル通信を行う手法は、MS-DOSやFreeDOSだけでなく、LinuxやWindowsの仮想マシンでも同様に実現可能です。これは、特に工業用機器のシミュレーションや、レガシーソフトウェアがシリアル通信を必要とする場合に非常に有用です。
例えば、以下のようなシナリオで活用できます:
- 工業用機器のシミュレーション
一部の工業用機器は、シリアルポート経由で他の機器やシステムと通信するように設計されています。仮想環境を使用して、物理的な機器なしでシミュレーションを行い、開発やテストを進めることができます。LinuxやWindowsの仮想マシンを利用し、com0comで仮想COMポートを作成すれば、物理的なケーブルを使わずにデータのやり取りが可能になります。 - レガシーソフトウェアの通信
古いソフトウェアやシステムは、シリアルポートを使った通信に依存していることがあります。例えば、90年代の測定器や製造機器を制御するためのソフトウェアは、現代のハードウェアとの互換性がない場合があります。com0comを使うことで、こうしたレガシーソフトウェアを仮想環境内で再現し、テストや運用を続けることができます。WindowsやLinuxの仮想マシンに仮想COMポートを割り当てることで、実際の機器を使わずに通信プロトコルの確認やソフトウェアの動作を検証することが可能です。 - 異なるOS間のシリアル通信
仮想マシン間で異なるOS(例:LinuxとWindows)を使用して、シリアル通信を行うことも可能です。仮想COMポートを使えば、物理的な接続を必要とせず、仮想マシン間でデータを交換できるため、異なるOS間でのテスト環境を構築しやすくなります。
com0comの代替ツールと他のシリアル通信方法
com0comは仮想COMポートを作成するための定番ツールですが、他にも仮想COMポートを利用する方法やツールが存在します。それぞれのツールには異なる特徴や用途があるため、自分のプロジェクトに最適な方法を選ぶために、いくつかの代替手段をご紹介します。
- Virtual Serial Port Driver (Eltima Software) Virtual Serial Port Driverは、com0comに代わる商用ソフトウェアです。このツールを使うことで、物理ポートを使わずに仮想COMポートを作成し、仮想マシンやアプリケーション間で通信が可能です。GUIを備えているため、設定が簡単で初心者にも使いやすい点が魅力です。商用利用に適しており、業務環境で安定した通信が必要な場合におすすめです。
- Tibbo Virtual Serial Port (TVSP) Tibbo Virtual Serial Portも仮想COMポートを作成するツールの一つです。ネットワーク経由でのシリアル通信をサポートしており、遠隔地にあるデバイスやリモートシステムとの通信が可能です。IoTやリモート機器の管理に向いており、特殊なシナリオでの利用を考えているユーザーに最適です。
- USBシリアルアダプタの利用 もし物理的なCOMポートが必要な場合は、USBシリアルアダプタを使うのも一つの方法です。多くのデバイスでサポートされており、物理的な通信が必要な場面で活用できます。例えば、レガシー機器との通信が必要な際には、このようなアダプタが手軽な解決策となります。
- ser2netとsocatを利用したネットワーク越しのシリアル通信 Linux環境では、ser2netとsocatを利用することで、シリアル通信をネットワーク越しに行うことができます。この方法は、仮想COMポートが必要ない場合に役立ちます。例えば、複数のリモートマシンにシリアル接続を共有したい場合や、物理的なシリアルポートを持つデバイスと通信を行いたい場合に有効です。
これらのツールや方法を比較し、自分のプロジェクトに最適な方法を選ぶことが重要です。com0comは無料で強力な選択肢ですが、用途に応じて他のツールも検討する価値があります。
Bill Redirectを使用したシリアルポートおよびTCP通信のソリューション
Bill Redirectは、シリアルポート(RS232)、USB、TCPポートなどの間でデータを転送できる強力なリダイレクトソフトウェアです。このソフトウェアは、バーコードリーダーやシリアルデータキャプチャーデバイスなど、RS232シリアルインターフェイスやTCPイーサネット接続を備えたデバイスでのデータ通信に最適です。特に、次のような用途に活用できます:
- 工業用機器の制御とデータ転送
多くの工業用機器は、RS232やTCP接続を利用してデータを送受信します。Bill Redirectを使うことで、これらの機器のプロトコルを管理し、シリアルポートからのデータをTCPやUSB経由で他のシステムに転送することができます。 - バーコードリーダーやスキャナーのインテグレーション
Bill Redirectは、バーコードリーダーやスキャナーなどのシリアルデバイスをTCPネットワークに接続する場合に非常に便利です。デバイスが送信したデータをリアルタイムで転送し、Webアプリケーションや他のソフトウェアにシームレスにデータを渡すことができます。 - リモートデバイスの制御とデータ管理
リモートからのデバイス管理が必要な場合、Bill Redirectを使えば、TCPやイーサネットを経由してデータの転送やコマンド送信が可能です。たとえば、工場内の異なる機器やシステムをリモートでモニタリングしながら、必要なプロトコルを介してデバイスと直接通信できます。 - カスタマイズ可能なプロトコル制御
このソフトウェアは、プロトコルをカスタマイズしてTCPまたはシリアルポートに回答を送ることができるので、柔軟なデータ通信が可能です。特に、レガシーシステムのサポートや、独自のデータ転送要件を持つデバイスに適しています。
Bill Redirectを活用することで、複数のデバイスやシステム間でシリアル通信やTCP通信を効率的に行い、データの送受信を自動化できます。実際に動かした記事もありますので参考にしてください。