はじめに
なぜこのシステムが必要なのか
近年、積立NISAの普及により「長期・積立・分散」という投資スタイルが広まっています。しかし、この戦略には見落とされがちなリスクがあります。
積立NISAだけでは下落局面に対応できない
株式市場は200年の歴史で見れば右肩上がりと言われていますが、その途中には何度も大きな暴落がありました。リーマンショック、コロナショック、そして今後起こりうる〇〇ショック。「ずっと上がり続ける」保証はどこにもありません。
社会情勢の不安定化
地政学リスク、金融政策の転換、インフレ・デフレの波など、現代の投資環境は複雑化しています。「放置しておけば大丈夫」という時代ではなくなりつつあります。
証券会社のツールでは限界がある
オプション取引において重要な「建玉の偏り」「出来高の急変」といった情報は、証券会社の提供するツールではリアルタイムに整理・可視化することが困難です。高建玉のストライク、出来高急増の銘柄を瞬時に把握するには、独自のシステムが必要でした。
このような背景から、日経225オプションのリアルタイム分析ダッシュボードを開発しました。
システム概要
技術スタック
本システムは以下の技術を組み合わせて構築しています。
| 領域 | 技術 |
|---|---|
| フロントエンド | Next.js |
| バックエンドAPI | FastAPI(Python) |
| リアルタイム通信 | WebSocket |
| AI分析 | llama-server(ローカルLLM) |
| インフラ | Docker、リバースプロキシ |
| 内部処理 | Python |
アクセス方法
ブラウザからアクセスするだけで、誰でもリアルタイムのオプション分析を確認できます。WebSocketによる双方向通信により、ページをリロードすることなく最新データが自動更新されます。
※補足:WebSocketとは、サーバーとブラウザ間で常時接続を維持し、リアルタイムにデータをやり取りする技術です。チャットアプリや株価ボードなどで使われています。
ダッシュボード画面解説
1. 日経225ヘッダー

ダッシュボード最上部に配置されるヘッダー部分です。
表示内容:
- 日経225先物価格:リアルタイムの先物価格と前日比(例:50,280円 +30 (+0.06%))
- 満期情報:現在の限月と満期までの残り日数
- グローバル指標:VIX指数、USD/JPY為替レート、ダウ平均、ナスダック
グローバル指標は日本市場に影響を与える主要な外部要因です。特にVIX(恐怖指数)は市場のボラティリティを示し、急上昇時は警戒が必要です。
※補足:VIX指数とは、S&P500のオプション価格から算出される「恐怖指数」で、市場参加者がどれだけ将来の変動を警戒しているかを示します。
2. アルゴ分析レポート(AI Signal Lab)

複数の指標を統合し、AIが総合的な市場判断を行うセクションです。
表示内容:
- 予測価格:システムが算出した日経平均の予測値(例:¥50,316)
- 変動予測:予測される価格変動幅(例:+36)
- 推奨アクション:現在の状況に基づく戦略提案(例:「方向感不明 – レンジ戦略」)
- 信頼度:予測の確度(例:90%)
下部には各要素の詳細判定が表示されます:
| 項目 | 内容 | 判定例 |
|---|---|---|
| VIX | ボラティリティ状況 | 中立 |
| 為替 | 円相場の日経への影響 | 中立 |
| 海外株式 | ダウ・ナスの影響 | 強気 |
| オプション | 建玉バランスの偏り | 中立 |
3. オプション偏差モニター

4つの主要指標がどの程度「通常」から乖離しているかを一目で確認できるセクションです。
4つの偏差指標:
- VIX偏差:ボラティリティが平常時と比べてどれだけ高いか/低いか
- 為替偏差:為替レートが日経平均にプラス/マイナスどちらに作用しているか
- 海外株偏差:米国市場の動きが追い風か向かい風か
- 建玉偏差:プットとコールの建玉バランスがどちらに偏っているか
数値がゼロ付近ならニュートラル、プラス側に振れると強気寄り、マイナス側なら弱気寄りと判断できます。このモニターが一気に赤くなると、ヘッジを強める判断材料になります。
4. 建玉バランス分析

オプション市場全体の建玉(ポジション)状況を可視化するセクションです。
左側パネル:
- コール建玉合計:全ストライクのコール建玉数(例:83,902枚)
- プット建玉合計:全ストライクのプット建玉数(例:71,800枚)
- プット/コール比(PCR):両者の比率(例:0.86)
- 偏重判定:現在のバランス状態(例:「バランス圏内」)
※補足:PCR(Put/Call Ratio)とは、プット建玉÷コール建玉で算出される指標です。1.0より高いとプット優勢(弱気)、低いとコール優勢(強気)を示唆します。
中央チャート:建玉TOP14ストライク
建玉の多い上位14ストライクを赤(コール)と緑(プット)のバーで表示。どの価格帯に売り・買いが集中しているかが一目でわかります。
右側パネル:注目ストライク
特に意識されそうな価格帯を自動でピックアップ。「HIGH」「WATCH」「INFO」といったラベルで重要度を示します。
5. 嫌がらせシステム(Sell Pressure Toolkit)

名前はユニークですが、中身は真面目な分析ツールです。オプション売り手の損失ポイントをリアルタイムで追跡します。
主要指標:
- 最大痛みポイント(Max Pain):オプション売り手にとって最も損失が大きくなる価格帯(例:50,000円)
- 推定損失:その価格に到達した場合の売り手の推定損失額(例:27.75億円)
- 建玉集中度:特定価格帯への建玉集中率(例:46.8%)
売り手比率スライダー
30%〜90%の範囲で売り手比率を調整でき、「どのくらい売りポジションが積み上がった場合」のシミュレーションが可能です。
最大痛みポイントが現在の日経平均より上にある場合、コールの売り手が慌てるパターンになります。個人投資家はプット買いが多いため、このシステムでは「売り手がどこで悲鳴を上げるか」に注目しています。
6. 全行使価格スナップショット

FastAPIからストリーミングされる生データをテーブル形式で表示するセクションです。
表示項目(コール/プット両方):
- 建玉数と前日比
- 出来高
- IV(インプライド・ボラティリティ)
- 価格と前日比
フィルター機能:
- 全表示
- ATM付近(現在価格に近いストライクのみ)
- 高建玉(建玉数が多いもの)
- 高出来高(当日出来高が多いもの)
※補足:IV(インプライド・ボラティリティ)とは、オプション価格から逆算される「市場が予想する将来の変動率」です。IVが高いほどオプション価格は高くなります。
このセクションでは、証券会社のツールでは難しい「高建玉・高出来高の銘柄を瞬時に整理する」ことが可能です。
7. 市場感情AIレポート

ローカルで稼働するLLMサーバー(llama-server)がリアルタイムで市場状況をコメントするセクションです。
表示内容:
- 状態:現在の市場感情(例:greed / fear)
- 信頼度:AIの判断確度(例:75%)
- サマリー:一言での市場状況(例:「市場は安定」)
詳細指標:
| 指標 | 説明 |
|---|---|
| トレンド | 上昇/下降/横ばい |
| リスク | 警戒すべきリスクの有無 |
| 推奨アクション | 具体的な行動提案(例:様子見) |
| Fear / Greed | 恐怖/強欲指数 |
| Panic | パニック度 |
| Volatility Stress | ボラティリティによるストレス度 |
| Options Sentiment | オプション市場のセンチメント |
人間が全てのデータを監視し続けることは不可能です。AIが「危ないところだけ教えてくれる」イメージで活用できます。
8. リアルタイム市場アラート

市場の異常をプログラムが自動検知し、即座に通知するセクションです。
検知対象:
- セッション累積変動:セッション開始からの累積変動率(例:0.86%上昇)
- オプション価格急変:特定ストライクの価格が急変した場合(例:58000円CALL +55.6%)
- ストライク別建玉急変:建玉数が急増/急減した場合(例:52000円CALL 建玉+25.20%)
各アラートには発生時刻が表示され、「該当行を見る」ボタンから詳細画面にジャンプできます。
ルールベースのプログラム監視により、人間が見逃しがちな「異常な動き」を自動でピックアップします。上部の市場感情AIレポートがLLMによる文章コメント、このアラートがプログラムによる条件検知と、役割分担をしています。
まとめ
本システムは、以下の課題を解決するために開発されました。
- リアルタイム性:WebSocketによる常時接続で、ページリロード不要の自動更新
- 情報の整理:証券会社ツールでは難しい高建玉・高出来高の瞬時把握
- AI活用:ローカルLLMによる自然言語での市場コメント
- 自動監視:ルールベースの異常検知アラート
積立NISAや現物株を保有している方にとって、「いつヘッジを入れるべきか」「どのストライクが注目されているか」を判断する材料として活用できます。
技術的にはNext.js + FastAPI + WebSocket + llama-serverという構成で、Docker環境で稼働しています。ブラウザからアクセスするだけで、これらの分析機能を利用できます。
※本システムは投資判断の参考情報を提供するものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いいたします。



