Xserver無料VPSの「2日更新ルール」技術検証と規約変更への対応

はじめに

2025年7月10日、Xserverが国内初の完全無料VPSをリリースしました。しかし、「2日〜4日ごとの手動更新が必要」という条件があり、多くの人が「面倒すぎる…」と諦めているのではないでしょうか。

そこで技術検証として、この手動更新の仕組みを調査し、自動化の可能性を探ってみました。

【2025年7月20日追記】 記事公開後、Xserverの利用規約に「契約更新を自動化するスクリプトやボットの利用は不正行為となります」という条項が追加されました。そのため、自動化スクリプトの提供は取りやめ、代替案をご提案します。

Xserver無料VPSとは

スペック比較

Xserver無料VPS vs 有料VPS

プランXserver無料VPS 4GBXserver有料VPS 2GBXserver有料VPS 6GB
メモリ4GB2GB6GB(4GB+2GB)
vCPU3コア3コア4コア
ストレージNVMe SSD 30GBNVMe SSD 50GBNVMe SSD 150GB
月額0円580円〜1,190円〜
更新方式手動(2日ごと)自動自動

Google Cloud Platform との比較

項目Xserver無料VPS 4GBGoogle Cloud e2-micro
メモリ4GB1GB
vCPU3コア2個のvCPU(共有)
ストレージNVMe SSD 30GB30GB 標準永続ディスク
月額0円(手動更新)0円(月744時間まで)
データ転送30Mbps制限1GB/月(北米から)
制限手動更新必須時間制限あり

重要なポイント

  • Xserver無料VPSはメモリ4倍、vCPU性能も高い
  • Google Cloud e2-microは時間制限があるが、Xserverは手動更新で継続可能
  • 有料VPS(月580円〜)と比較しても、無料版は十分実用的

当初の課題:手動更新

無料VPSには以下の制約がありました:

  • 2GBプラン: 4日ごとの手動更新
  • 4GBプラン: 2日ごとの手動更新

「手動で更新ボタンを押さないとサーバーが削除される」

この仕組みのせいで、多くの人が利用を諦めています。

更新の仕組みを技術検証

実際に4GBプランを契約して調査したところ、以下のことが分かりました:

更新可能タイミング

  • 利用期限の1日前から更新手続きが可能
  • 例:7月13日期限 → 7月12日から更新可能

更新手順

  1. Xserver VPSにログイン
  2. 該当サーバーの詳細ページへ
  3. 「更新する」ボタンをクリック
  4. 「引き続き無料VPSの利用を継続する」ボタンをクリック

重要な発見

早めに更新しようとすると「利用期限の1日前から更新手続きが可能です」というエラーが表示されます。

更新システムの仕様について

検証で発見した重要な仕様があります。

更新処理は単純に「前回更新から2日後が新しい期限」ではなく、現在の残り時間も考慮して期限が延長される仕組みのようです。

:利用期限まで1時間残っている状態で更新した場合

  • ❌ 単純計算:更新から2日後が新期限
  • ✅ 実際の動作:残り1時間 + 2日延長 = 合計49時間後が新期限

この仕様はユーザーにとってより親切(残り時間が無駄にならない)である一方、自動化を考える場合はより複雑になります。

自動化の技術検証結果

当初のアイデア

この手動更新をPython + Seleniumで自動化することを検証しました。

基本戦略

  1. 36時間ごとに実行(確実に更新タイミングを捉える)
  2. 更新可能な時間帯かを事前チェック
  3. Seleniumでブラウザ操作を自動化
  4. エラー時はスクリーンショット保存

なぜ36時間なのか?

  • 2日(48時間)の利用期限
  • 最後の24時間で更新可能
  • 36時間ごとなら確実に更新タイミングに入る

技術的価値

この検証により以下の技術的知見が得られました:

  • Selenium自動化の実践例
  • cron/タスクスケジューラの活用
  • VPS管理の自動化ノウハウ
  • Web APIを持たないサービスの操作手法

規約変更による方針転換

規約変更の経緯

記事公開後、Xserverの利用規約に重要な変更がありました。

変更前(2025年7月10日時点)

変更後(2025年7月20日確認)

新たに追加された条項:

※6 無料VPSは、コントロールパネルから2日または4日ごとに契約を更新する必要があります。 契約を更新しない場合、サーバーが削除されますのでご注意ください。 なお、契約更新を自動化するスクリプトやボットの利用は不正行為となります。

対応方針

この規約変更を受けて、以下の対応を行いました:

  1. GitHub上の自動化スクリプトを削除
  2. 記事内容を技術検証レポートに変更
  3. 代替案の提案に方針転換

技術検証の結果は教育的価値があるため、そのまま残します。

代替案:バックアップ戦略

自動化ができない以上、うっかり更新を忘れた場合の対策が重要になります。

現実的な運用方法

基本運用(95%のケース)

  • 2日に1回、管理画面で手動更新
  • カレンダーやリマインダーで忘れ防止

緊急時対応(5%のケース)

  • 出張や病気で更新を忘れた場合
  • バックアップからの復旧で対応

システム全体バックアップ

バックアップコマンド

# システム全体をアーカイブ
sudo tar --exclude=/proc --exclude=/tmp --exclude=/sys \
    --exclude=/dev --exclude=/mnt --exclude=/media \
    -czf system-backup.tar.gz /

# クラウドストレージに保存
rclone copy system-backup.tar.gz remote:backups/

リストアコマンド

# 新しいVPSでリストア(要注意:-p オプション必須)
sudo tar -pxzf system-backup.tar.gz -C /

重要-p (--preserve-permissions) オプションなしだと:

  • 全ファイルがroot:rootになってしまう
  • nginx、mysql等のサービスユーザーの権限が失われる
  • システムサービスが起動不能になる

注意点

  • ブートローダーは含まれないため、新規OSインストール後のリストアが前提
  • カーネルバージョンが変わると起動しない可能性
  • /etc/fstabのUUIDやネットワーク設定の調整が必要な場合がある

軽量なスクリプトインストール方式

もう一つの選択肢として、インストール済みアプリケーションをスクリプト化する方法があります:

#!/bin/bash
# setup.sh - 環境再構築スクリプト
apt update && apt upgrade -y
apt install -y docker.io nginx nodejs npm python3-pip
pip3 install rclone

# 設定ファイルもGitで管理
git clone https://github.com/your-username/vps-configs
cp vps-configs/nginx.conf /etc/nginx/
cp vps-configs/.bashrc ~/

スクリプト方式 vs システム全体バックアップ

方式メリットデメリット
スクリプト軽量、透明性、再現性時間がかかる、設定ファイル別管理
システム全体高速復旧、完全性容量大、環境依存

推奨:両方を組み合わせたハイブリッド方式

  • 通常:スクリプト + 設定ファイル管理
  • 緊急:システム全体バックアップから即座復旧

実用的な活用例

4GBメモリ・3コアvCPUで何ができる?

このスペックなら、以下のような最新のAIツールや開発環境も快適に動作します:

AI開発・コーディング支援

  • Claude Code: Anthropic製のコマンドライン型AI開発ツール
    • ターミナルから直接Claudeに開発タスクを依頼
    • e2-micro(1GB)でも動作するが、4GBなら余裕の動作
    • プロジェクト全体の理解・リファクタリングに最適
  • GitHub Copilot CLI: コマンドライン用AI補完
  • Continue.dev: VSCode統合型AIコーディングアシスタント
  • Codeium: 無料のAIコード補完ツール

開発環境・サーバー

  • Docker Compose: 複数コンテナの運用
  • Node.js + Next.js: フルスタック開発環境
  • Python + FastAPI: AI APIサーバー構築
  • PostgreSQL + Redis: データベース環境

Google e2-microとの実用性比較

用途Google e2-micro (1GB)Xserver無料VPS (4GB)
Claude Code動作するが制限あり余裕で動作
Docker開発単一コンテナのみ複数コンテナ可能
AI画像生成ほぼ不可能軽量モデルなら可能
Webアプリ開発基本的な開発のみ本格的な開発環境
データベースSQLite推奨PostgreSQL等も可能

結論: 4GBメモリがあることで、単なる実験環境から本格的な開発・AI活用環境にレベルアップします。

VPSならではの自由度

制限のないサーバー環境

通常のレンタルサーバー(ロリポップなど)では、SSH接続ができても様々な制限があり使いづらい場面があります。しかし、VPSなら:

  • root権限で自由にソフトウェアをインストール
  • 任意のポートでサービスを起動
  • DockerNode.jsなど、好きな環境を構築
  • システム設定の自由な変更が可能

この無料プランは、こうしたVPSの自由度を保ちながら、手動更新を続ければずっと使い続けられる点で非常に価値があります。

データバックアップ対策

「無料サービスだからデータが心配…」という方向けの対策方法をご紹介します。

外部サーバーへのバックアップ

レンタルサーバーなど他のサーバーをお持ちの方は、rsyncを使用してデータを丸ごとバックアップできます:

クラウドストレージへのバックアップ

VPSの自由度を活かして、rcloneをインストールすることで:

  • Google Drive
  • Dropbox
  • Amazon S3
  • OneDrive

など、お好みのクラウドストレージに完全自動バックアップを設定できます。

# rcloneのインストール例
sudo apt update
sudo apt install rclone
rclone config  # クラウドストレージの設定

これにより、無料VPSでありながらエンタープライズレベルのバックアップ体制を構築可能です。

技術検証の価値

得られた知見

今回の技術検証により、以下の貴重な知見が得られました:

  1. Web自動化技術:Seleniumによるブラウザ操作の実装
  2. システム管理:VPSの運用とバックアップ戦略
  3. 規約対応:サービス利用時の規約変更への適応
  4. 代替手段の検討:制約下での最適解の模索

学習効果

この検証プロセス自体が貴重な学習体験となりました:

  • 問題分析から解決策立案まで
  • 技術実装とテスト
  • 規約変更による方針転換
  • 代替案の提案

今後への活用

得られた技術ノウハウは、他の場面でも活用できます:

  • 他のWebサービスの自動化
  • システム管理の自動化
  • バックアップ戦略の構築
  • 規約変更への対応手法

まとめ

Xserver無料VPSは、手動更新の手間はあるものの、4GBメモリ・3コアvCPUという魅力的なスペックを無料で利用できる貴重なサービスです。

推奨する利用方法

  1. 基本は手動更新:規約に従った正しい利用
  2. バックアップ体制構築:うっかり忘れ対策
  3. 活用方法の探求:高スペックを活かした開発環境構築

技術者としての学び

今回の検証により、以下の重要性を再認識しました:

  • 規約の動的変化への適応能力
  • 制約下での最適解の模索
  • 技術検証の継続的価値

結果的に自動化は実現できませんでしたが、得られた技術的知見は今後の開発に活かせる貴重な財産となりました。

注意事項

  • この記事は技術検証目的です
  • 規約変更によりサービス内容が変わる可能性があります
  • バックアップは定期的に取ることを強く推奨します
  • サービス利用は規約に従って適切に行ってください

関連リンク

バックアップ解説動画

Xserver無料VPS公式サイト

レンタルサーバーバックアップ記事

思えば、最初は画像認識もCloudflareの認証もなかったですなぁ。

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